顔面ブロックとスクランブル顔面との違いについての考察

 

キャプテン翼の中で外すことのできない名脇役といえば、言わずもがなガッツマン石崎了君である。

原作では意外性の男と銘打たれ、ここぞというときにいつもゴールを守ってきた良きDFである。

そして、ゲーム版のキャプテン翼は言ってしまえばこの石崎君の成長劇であったといっても過言ではない。

本題に入る前にこの成長劇について軽く触れておこう。

 

まずFCで発売されたキャプテン翼においての石崎君はぱっとしない普通のキャラであった。

一応全日本のチームに選ばれてはいるがより高性能の高杉君と入れ替える人も少なくはなかった。

原作ではスタメンであったにもかかわらずゲームでのスタメンはこの高杉君であった。

次にキャプテン翼2だがここにきてこの石崎君は大躍進を遂げる。

というよりこの後の石崎君は 大躍進の連続であった。

まずあげられるのが必殺技を持ったことだ。

原作でもおなじみの「顔面ブロック」というものだが この「顔面ブロック」、多大な体力を使用するが相手のシュートをほぼ100パーセント防ぐという

大変高性能なブロック技であったためここぞというときに多用した人も多い。

実際にこの技のおかげで以前雌雄を決した高杉君との性能差が明確化し、見事に全日本スタメン入りを果たしたのである。

 そして舞台をSFCに移してキャプテン翼3。

なんとこの3で石崎君の永遠のライバルとなる アメリカチームのキャプテンミハエル君が初登場する。

石崎君がただの脇役からメインキャラに昇進する瞬間であったといってもいいくらいだ。

 そしてそのアメリカ戦においてなんと石崎君はミハエル君の必殺シュートである「ローズバスター」を 見よう見まねではなつ「山猿バスター」というものを習得してしまう。

 これにより全日本のDFのすべてが必殺シュートを所持したことになり全日本の得点力がまた一つ強化されたことは言うまでもない。

 続いてキャプテン翼4では石崎君はブラジルで翼が所属しているチームであるサンパウロに入団してしまう。

 これがどういうことかというと、キャプテン翼4はマルチシナリオであるがそのほとんどがサンパウロを 操作するか全日本を操作するかというものになる。

南葛を操作する場合を除いてすべての試合に石崎君を起用できるのである。

 というより主人公翼のいるところに必ずといっていいほど石崎君が存在しているのである。

 これでこの石崎君がどれだけ重要な位置にいるかわかってもらえたはずだ、

それだけでなくこの石崎君は サンパウロに入る前に特訓でもしていたらしくはじめから「顔面ダイビング」という必殺技を習得している。

 これでダイレクトシュートを所持したこととなりサンパウロの重要な得点源として活躍することとなる。

 さらにそれだけでなくこの4で「山猿タックル」という必殺タックルを覚えてしまう。

 DFにとって必殺タックルが有るか無いかはかなり重要でありこれで名実ともに石崎君は使えるDFになったといえる。

 最後に5であるがストーリー的にはぱっとしなかったもののこの作品においても石崎君はしっかりと必殺技を習得してしまっている。

 5にてライバルのミハエル君の新必殺シュートである「ホーリ−クロス」を防ぐ際に発動した必殺セービング!!

 ・・・・「スクランブル顔面」・・・・・

 次藤君の足と石崎君の足をドッキングさせ互いの脚をばねのように伸ばしあい反動をつけてジャンプした後に 顔面ブロックをはなつ技。

この技は原作においても一度だけ使用された技である。

 以後よくわからない技としてこのスクランブル顔面は活躍していくことになる・・・

 と、ここまで書いてみたがやはりキャプテン翼というゲームは石崎君の成長劇であったといえる。

 普通主役級キャラでもない限り一つの作品づつ必殺技を覚えるキャラなどいない。

 このことから石崎君は開発スタッフから並々ならぬ愛情を受けていたということが推測できる。

 さて、そして今回の議題である「顔面ブロック」と「スクランブル顔面」の違いについてだが、

この二つの技、体力の消耗量も技を放った後の効果もまったく一緒なのである。

 同じゲームのしかも同じキャラクターの出せる条件まで同じである技をなぜ持たせてしまったのであろうか。

 そこをも検証していきたいと思う。

 さて、それではこの「顔面ブロック」と「スクランブル顔面」の相違点を列挙していきたい。

 まず最初はなによりも「スクランブル顔面」がコンビプレイ技であることだ。

この技は次藤君の足に乗るために 次籐君が同じチームにいなければ使用することができない。

これはかなりの違いといえる。

 つまり本来ならば「顔面ブロック」を使うべき場面で、次藤君がいさえすれば「スクランブル顔面」と選択することができるのである。

 こう考えるとより条件の限られるほうが強力な技だと考えることができる。

 しかし上で述べたように両技のガッツ(体力)消費量はともに400。

 そしてその効果もボールをこぼれだまにする(再び相手の手に渡る可能性があるため危険を避けきれるわけではない)というものである。

 せっかくだからと「スクランブル顔面」を選択する人のほうが多そうだがそれだけのものなのであろうか?

 次に配置されたボタン設定だ。このゲームは十字キーで行動の選択をしてボタンでその行動の必殺技を選択するというシステムを採用している。

 どのボタンを押すかによって必殺技の威力が変わっていくわけなのだが、

公式な設定によるとA→B→Y→Xという順番に 体力の消費量や威力が高くなっていくとされている。

 そして「顔面ブロック」の対応ボタンはB。「スクランブル顔面」の対応ボタンはYなのである。

公式設定を元に考えるとスクランブル顔面のほうが強い技ということになるが、「スクランブル顔面」は後から覚える技であり

次藤君がいないと使えない技なのである。

覚えていない状態で、もしくは次藤君がいない状態でボタン配置がどう表記されるか という問題を解決するための事前策ということも考えられない。

(現にシュナイダー君の必殺シュートである「ファイヤーショット」と「ノンファイヤー」という二つの技があるが、

 「ノンファイヤー」は「ファイヤーショット」よりも体力消費量が少ないにもかかわらずボタン配置はBボタンが「ファイヤーショット」

 Yボタンが「ノンファイヤー」というふうに配置されている。

 これは「ノンファイヤー」が後から覚える技(レベルの上昇によって覚える技)であるために後から入ってきた際に

 プレイヤーが混乱しないための措置だと思われる。よって公式のボタン配置の設定は新しい技の参入によってその定義を崩されることとなる)

 と、これだけ見てみると「スクランブル顔面」のほうが撃ちにくいだけの同じ技という結論が出てしまうが、ここで発想を転換させてみる。

 発動すればもう100パーセント決まる技であるこの二つの技がひょっとしたら失敗する場合があるのではないかと。

 相手のシュートが強すぎて防ぎきれないことがあるのではないかと。

実際に原作のほうでは南葛対東邦戦で日向君の「タイガーショット」を 石崎君が「顔面ブロック」で防ぐ場面が存在するが

、この時「タイガーショット」は軌道を上にずらしたとはいえちゃんとゴールに向かって 飛んでいったのである。

「スクランブル顔面」もまた原作に忠実な技であるとすれば「顔面ブロック」がシュートを防ぐ確率は 100パーセントではないと判断できる。

 これを確認するためにはできるだけ大きいレベル差でできるだけ強力なシュートを受ければいい。

この条件をすべて満たす展開は キャプテン翼5で一度も負けることなく最終戦の相手であるカンピオーネのアルシオン君から「スターバースト」を撃たれる事だ。

 幸いにもセーブデータが残っていたので実践してみることにした。「顔面ブロック」で25セーブ。「スクランブル顔面」で25セーブ。

 計50発の「スターバースト」を石崎君の顔面で受けてみた結果・・・・

 なんと「スターバースト」を一発も止めることができなかった。

最初から自分の見識が甘かったと判断せざるをえない。

 そもそも同レベル上であってもスターバーストは止めることが難しい技なのでこれを引き合いに出すべきではなかったのかもしれない。

 そこで考えたのが「スターバースト」よりも威力の低いものではどうかということだ。

 アルシオン君が持つもう一つの必殺シュートの中に「シャドウストライク」というものがあるが

この技は試合中においてCPUがノーマークからでしか使ってこない技であるのでデータの算出は不可能。

 そこでシュートに限らず必殺ドリブルや必殺パスなどに対してのデータを算出してみた。

 幸いアルシオン君はその両方である「芸術的なドリブル」と「バックスピンパス」を所持しているので 両方を交えつつまた25セーブづつ試してみると、

 「顔面ブロック」のセーブ率は12パーセント。「スクランブル顔面」のセーブ率は46.5パーセント。

 なんと「スクランブル顔面」が「顔面ブロック」を大きく上回る結果が提示された。

 ここで「スクランブル顔面」の方が性能が上だということが証明されたわけだが、納得いかないのが 両技共シュートをとめるための技であるということ。

肝心のシュートのセーブ率がわからないことには 一概にどんな状況でも「スクランブル顔面」を使えばいいというわけではなくなってくる。

 そこで、カンピオーネのCFで9番である新田君の「ファルコンダイブ」という技で改めて25セーブづつ 競ってもらった結果、

「顔面ブロック」のセーブ率は0パーセント。「スクランブル顔面」のセーブ率は50パーセント。

これを見てもやはり「スクランブル顔面」の方が性能がいいといわざるをえない。

だがここで一つ問題が発生した。「顔面ブロック」や「スクランブル顔面」は相手のダイレクトシュートに対しても 防ぐことが可能である。

ここでまたアルシオン君の最強のダイレクトシュートである「シューティングスター」を 引き合いに出してしまうと「スターバースト」同様図りきれない可能性があるので

また新田君にモルモットになってもらうことにしよう。

新田君のダイレクトシュートである「隼ボレーシュート」を改めて25セーブづつ競ってもらった結果、 まったく止めることができなかった。

そもそも相手のダイレクトシュートは地上で撃つときよりも威力が上がるものなので 地上でかろうじて止めていたものがダイレクトでとめられるはずもないわけだ。

「顔面ブロック」と「スクランブル顔面」の大きな違いは性能差もある事がわかった、

がやはり最後にものを言うのは それを使用したときの石崎君のセリフの違いに他ならない。

「顔面ブロック」の時のセリフは「ぶへぇぇぇ!」に対し「スクランブル顔面」の時のセリフは「ぐわぁぁぁ!!」である。

 ここで注目していただきたいのがエクスクラメーションマーク「!」の数である。

「顔面ブロック」は一つなのに「スクランブル顔面」は二つもある。

 このエクスクラメーションマークの数の違いは純粋に石崎君がどれだけ痛い思いをしているかを如実に表している。

 単純に考え石崎君は「スクランブル顔面」の方を「顔面ブロック」より二倍痛がっていることになる。

 次藤君の力も合わさった上でボールに激突しているのだから当然といえば当然だ。

 それはつまり画面上のキャラクターに同調しているプレイヤー本人に与える精神的で物理的なダメージと直結していると考えられる。

 だがプレイヤーはゲームに対しより大きな刺激を求めている節があるために自然と「スクランブル顔面」を選んでしまい それがまた性能の差にも現れている。

これはもはやスタッフが最初から意図して仕組んでいたとしか思えない事実だ。

 「顔面ブロック」と「スクランブル顔面」。この二つにはやはり大きな差が存在した。

おそらく同レベル上では知ることもできなかったであろう事実が 今回のレポートでこれだけ明らかになった。

 性能差。セリフの違い。ボタン配置。使用条件。覚えるタイミング。

 これらのすべてが実にバランスよく配分されておりプレイヤー側に知らず知らずのうちによい選択肢を選ばせるようにできている。

 それはすべてスタッフの優秀さを明確にしているということだ。

 となるとスタッフは自分たちの力を誇示するために、そしてさりげなく通達するために石崎君を利用したのではないだろうか?

 石崎君の特定の技の疑問についてもし誰かが解明しようとしたのであればスタッフはそれを提示できる。

 今回の論文を書いたことによりテクモのスタッフはうかばれたのであろうか?それはもうわからない。

なぜなら もうキャプテン翼のゲームの著作権はコナミに移ってしまっているからだ。

 コナミから石崎君に対する思い入れはまったく感じられない。なにせ顔面ブロックが必殺技として扱われていないのだから。

 私は旧スタッフに言いたい。「あなたたちが僕たちに残した「顔面ブロック」と「スクランブル顔面」の違いについての謎は解き明かしましたよ」と。

 そして「ありがとう」と。

 

         参考見聞(SFC:キャプテン翼5・覇者の称号カンピオーネ:製作・テクモ)